たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に

純愛モノの皮を被ったホラー小説である。前半は、冴えないサラリーマンが年下の女の子と年上の女性のあいだで翻弄される恋愛小説……なのだが、だんだん雲行きが怪しくなり、3分の1ほど読んだところで一気にホラーの様相を呈してくる。公式の紹介文には「ときめきと恐怖が交錯する一気読み必至、衝撃の結末が待つどんでん返し純愛ミステリー!」とあり、まさにそのとおりなのだが、わたしは「もはやこれミステリー通り越してホラーじゃん」と思った。怖かった。

こういう「どんでん返しモノ」は、どんでん返しに至るまでのパートがちょっとしんどかったりする。長い長い過程を読み飛ばしていきなり結末を読んでしまいたい、そんな気持ちをグッとこらえて、黙々と読む、読む、読む……その我慢があるからこそ、どんでん返しが起きたときの爽快感がいっそう高まるんだけど。『イニシエーション・ラブ』とか『葉桜の季節に君を想うということ』とか。

しかし本作は、めまぐるしく展開が変わっていくので、ストレスなく一気に読めたのもまたよかった。3章構成で章ごとに視点が切り替わるのだが、2章の冒頭の時点でいきなり衝撃の展開があり、2章を読み終えるころにはおなかいっぱい。そこで3章に入りまた視点が切り替わるので、「うわー、まだこれから更にひっくり返してくれるのか!」とすごくワクワクした。

映画やドラマのような映像的、脚本的なおもしろさの本。だけれど、個々の視点からの心理描写を丁寧に行える小説だからこその怖さがある。
文章も平易で読みやすく、一気読みにちょうどいい長さなので、長距離移動のお供などにもおすすめ。わたしは「将来に対する唯ぼんやりとした不安」にさいなまれて眠れなかった夜に読んだ(極上のエンターテイメントだけが不安を消してくれる……)。

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に
祥伝社文庫

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